埼玉県の「ワクチン・検査パッケージ」の取り組みについて

まん延防止等重点措置下での飲食店利用について、埼玉県では、午後8時までの営業、4人までのグループでの入店及び酒類提供を控えることをお願いしています。改めて県民の皆様、飲食店事業者の皆様のご協力に感謝申し上げます。

その一方で、政府の基本的対処方針に基づいて、「ワクチン・検査パッケージ」に登録した飲食店においては、ワクチン接種もしくは検査証明の確認がある場合には、9時までの営業、8時半までの酒類提供、人数制限の解除という特例措置を適用しています。確認できないグループであったとしても、埼玉県の基本的な要請に基づき入店・飲食が可能です。また、飲食店に対しては、可能な場合には、確認できたグループとそうでないグループのエリアを分離することを勧奨しています。

このような厳しい要請及び特例措置の導入は、県内の現場の状況から積み上がってきた証拠(エビデンス)と専門家の知見を合わせたウイズ・コロナの措置ですが、その考え方は以下のとおりです。

これまでの会食や夜の街経由での感染割合を見ると、図のとおり、一昨年に10カ月程度をかけて10分の1程度に低下しています。この時期には、県民や事業者の皆さんが感染防止対策を講じていただいた時期で、飲食店では換気対策やパーティションの設置、来店客の間のスペース確保などを行っていただきました。この時期、会食による感染割合に上下はあるものの一貫して低下傾向で、店舗の営業時間短縮や人数制限との直接の連関があるようには見られません。昨年来のワクチン接種後も会食を感染源と疑われる割合が低下していますが、この時期の低下の割合は、一昨年と比較すればわずかです。

感染防止には、一切の社会活動を停止することが最善ですが、感染リスクゼロを達成するためには、大きな犠牲を伴うことになります。第一波のころのような、感染防止と経済・社会活動を100対ゼロで考えるのではなく、一定の知見が積み重なる中、どのように効果的な感染防止策を講じていくかが肝要です。一昨年来の会食での感染割合の低下をエビデンスとして検討すると、やはり高いレベルの感染防止対策を維持することが最も重要です。

埼玉県では、日本初の飲食店の感染防止対策認証ステッカー制度を導入する等、事業者、そこで働く人、利用される方に安心していただける制度を導入してまいりました。しかしながら、その一方で、度重なる緊急事態措置やまん延防止等重点措置疲れ、オミクロン株の毒性の弱さに起因する緊張感の低下、事業者の体力の喪失などもあり、一部の飲食店では認証の返上、感染防止対策をないがしろにして自由に飲食すること等の動きが出始めました。

このため、まん延防止等重点措置以降、首都圏でも最も高いレベルの原則を適用する一方で、認証を得て「ワクチン・検査パッケージ」に参加して感染防止対策を講じていただける飲食店には特例措置の適用を行うことといたしました。多くの事業者に参加いただくことで、これまで効果を上げてきた感染防止対策とそのレベルの維持を期待することができます。

もちろん、一定の効果を上げたワクチン効果も重要です。ワクチンについては、当初より、感染を防止するものではなく、重症化の予防を主たる目的としています。このことに加え、感染の低減も期待されてきました。しかし、デルタ株等で90パーセント程度のワクチンの感染防止に関する有効率は、長崎大学の研究等によれば、オミクロン株になって50%にまで下がりました。この50%という数値は、毎年なじみが深いインフルエンザの予防接種の効果が30%台ですから、下がったとは言え、一定の効果が期待できる数値です。それは、オミクロン株になって効果が1000分の1程度になり、効果が期待できなくなった抗体カクテル療法の場合とは大きく異なります。

この一定のワクチンの効果と感染症防止対策の維持に向けた対策の維持の両方を講じることにより、感染防止対策と経済の両立というウイズ・コロナを実現させていく必要があると考えています。

なお、事業者の皆様にご負担をおかけしますが、埼玉県では事前に、国内最大規模での「ワクチン・検査パッケージ」の実証実験を行っていて、そこでは事業者負担があるものの、利用された方の安心感等、メリットの方が大きいとの結論が得られました。改めて事業者の皆様のご理解とご協力をお願いするとともに、県民の皆様には、利用客の安心への思いを形にした感染防止対策を講じる飲食店をご利用いただけるようお願い申し上げます。

なお、抗原検査を行うことにより飲食店での飲酒を認める全員検査制度もあり、埼玉県としても適用を検討してまいりましたが、まん延防止等重点措置を検討する際、薬品卸事業者に確認したところ、検査キットが不足気味であるとの調査結果が出ていました。そこで、ワクチン検査パッケージの5倍の検査キットを必要とする希望者全員検査を、キットがない中で適用することは難しいとの判断になりました。

極めて速いペースで感染が拡大する一方で、多くの皆様のご協力により、会食・夜の街経由の感染は絶対数、割合ともに減少しています。引き続き、ウイズ・コロナの感染防止策を徹底してまいります。